サロメ「七つのヴェールの踊り」とベリーダンスにタロット、無意識下の彷徨

私は、一時期、オスカー・ワイルドの「サロメ」にはまっていた時期があります。それはオーブリー・ビアズリーのサロメの挿絵にとても魅かれたのがきっかけだったと思います。そのオスカー・ワイルドの戯曲をリヒャルト・シュトラウスがオペラ化しており、何本か海外公演のDVD映像を見たり、実際に新国立劇場にオペラを観に行ったりもしました。

オペラ「サロメ」のチラシ

そこでサロメが預言者ヨハネの首をはねるきっかけとなる7つのヴェールの踊りというのがあります。私はその踊りはベリーダンスに違いないと思ったりしたのですが、如何せん、歌が本業のオペラ歌手はどれも心に響く踊りはなかなか難しいなとも思ったりしました。

新国立劇場で購入した公演写真

ファムファタールとしてのサロメ。画家ギュスターブ・モローがサロメの一場面を官能的かつ幻想的に描いた、あの有名な絵を求めてしまっているのですが、なかなかオペラでは難しいのかな?と思ったり。演劇も観たりしましたが、血の海で恍惚の表情をみせるサロメはあるものの、踊りについて、これはと感じたことはなかったように思います。

オペラ「サロメ」のブルーレイ

生と死の狭間で踊るダンス、預言者の首を落とすまでのダンスは、私は、官能的でもあり根源的な要素も感じられるベリーダンスであるべきではないかと、思ったりします。だからエジプトに行った時にクルーズ船のショーでベリーダンスをお願いしたことがあります。それは本場のダンスを見てみたいと思ったから。でもそれは観光客向けの余興のような感じで、残念ながらこれはと響くものがあまり感じられませんでした。むしろタンヌーラというイスラム・スーフィーの回転するダンスに心ひかれました。タンヌーラは回転することで神に近づくもの。

サロメに関する様々な本

いずれにせよ、私の中では、ベリーダンスはサロメに象徴され、モローが描いたように生と死の境界、血とエロスの狭間にあるダンスなのでは?というキーワードが頭の中でずっと残っていました。ダンサーからすると生と死の境界、血とエロスなんて、ベリーダンスのこと全然わかっていないと言われそうなのですが。

サロメの漫画も読んだ

2009年にNHKで放送された元Speedの上原多香子さんが、ベリーダンスを習いにトルコへ出かけた番組が、放送されました。その時、ベリーダンスというキーワードにひっかかり、録画をしていました。それは上記にも書きましたが、サロメが踊った7つのヴェールの踊りは、たぶんベリーダンスにに近いものだったに違いないと、勝手に想像していたからだと思います。今回、古い録画した番組を整理していたら、それが出てきたのでもう一度見てみました。

DVDも出ているようです

番組は、上原さんがトルコの伝説的なベリーダンサーのセマ・ユルドゥズさんという方を訪ねていくドキュメンタリータッチなもの。セマ・ユルドゥズさんは世界的に活躍するダンサーで、映像を通しても、その踊りは他のダンサーと各の違いを感じさせるに充分でした。

セマ・ユルドゥズさんは、ロマの出身、いわゆるジプシーと呼ばれる移動型民族。もしロマの踊りがベリーダンスに近いものであるなら、ロマ族は北インドから中近東に流れてきたということなので、サロメのダンスもそれに近い可能性があります。上原さんですが当時20代、ベリーダンスの衣装を身に着けた姿はとてもビューティフル。私は勝手にサロメとだぶらせたのですが・・・。

YouTubeから番組の映像

その上原さんがダンスを習ったセマ・ユルドゥズさんが住んでいるのはトルコ・イスタンブールのスルクレという地区。ロマ族の居住地域で、その昔オスマン帝国時代、スルタンのために踊った舞踊家や音楽家がその芸を磨いた場所でもあったそうだとか。10年前の映像ですが、再開発が進み取り壊された場所も映像で見せており、現在その街はどうなっているのか、わかりません。

番組ではトルコのアナトリアという場所に行くのですが、そこで結婚式の前夜祭で女性たちが夜通し踊るそうです。番組では8000年前からこの地域に人が住み、番組ではベリーダンスの起源は豊穣と多産のため女神に捧げる踊りが起源と紹介されていました。

私は歴史的なことは、調べても勉強もしていないし、トルコに行ったことがないので全くわかりませんが、ベリーダンスはエジプト起源とか、ロマが起源だとかいろいろ書かれているのをネット上でみるのみなのですが、とても古い時代の、あのあたりの民族的舞踊だったような気がしました。昔はあのあたり、文明の中心地だったわけですから・・・。

ベリーダンスとタロット(クリック!)

ところで、驚いたのは番組の最後に、取材協力として「タロットの宇宙」というパフォーマンス作品をまとめたベリーダンサーのMIHOさんの名前が出てきたこと。聞くとMIHOさん、番組ででてきた セマ・ユルドゥズさんに師事しており弟子筋にあたるし、上原多香子さんにもベリーダンスを教えていたそうです。ダンス業界のことは無知なので、私としては思わぬ発見で驚きでした。

ちなみにMIHOさんは、ベリーダンサーとともにタロット・リーダーもしており、同じくタロットはジプシー起源という話もあるくらいなので、なにかこう無意識の領域で繋がっているなーと感じました。なのでMIHOさんが「タロットの宇宙」という企画を立ち上げるのも、それなりの理由があるということです。

そのMIHOさんですが、上記の「タロットの宇宙」は映画監督で伝説的な映画「エル・トポ」といった先鋭的な作品を撮るアレハンドロ・ホドロフスキー監督が、実はタロットの使い手で、自身も「タロットの宇宙」という分厚い本を出しており、この本に触発されたのが「タロットの宇宙」というベリーダンスで表現したダンス作品。アレハンドロ・ホドロフスキーの映画は私も大好きで、それに触発されたなんていうとワクワクします。ホドロフスキーの映像は唯一無二。

で、MIHOさんが企画した「タロットの宇宙」、これがなかなかいいんです。オンラインで配信しているので、ぜひ見てほしいと思います。もうベリーダンスという枠組みを超えていると。それぞれのダンサーがタロットの大アルカナと呼ばれる22枚のカードを解釈しクリエイティブに表現している。

ホドロフスキーのタロット本

上原さんの映像を見て、昔「サロメ」に魅了された過去から現在への私の無意識下の彷徨、過去記憶のイメージの連鎖を漠然と感じたのでした(笑)

下記の3本の映像は「タロットの宇宙」を企画し、上原多香子さんにベリーダンスを教えていたMIHOさんと同じくベリーダンサーのSangoさん<タロットとベリーダンス>について語った映像です。

Follow me!